パブリックヘルスプロモーション・リサーチユニット
概要
あらゆる人々の健康生活を保障する社会の構築をめざして、子ども、妊娠育児期の女性、労働者、障害者、高齢者の心身健康とそのケアに関わる心理社会的要因を疾病生成要因および健康生成要因の両面から実証解明し、地域・学校・職域のヘルスプロモーション施策を検討しています。
目的
少子高齢化と経済格差拡大の社会構造変化にともない、我が国では子ども、妊娠育児期の女性、労働者、障害者、高齢者などにおける心身の健康問題が増大し、ケアを必要とする人々が増えています。主要な問題として、全ライフステージを通じて抑うつ、認知症等のメンタルヘルスがあげられるほか、子ども(未成年)では偏食・齲蝕・喫煙、妊娠育児期の女性・労働者では喫煙・生活習慣病、障害者・高齢者およびそのケアワーカーではQOL維持・介護等に関わる問題があります。
これらはいずれも、生物学的要因のみならずストレスや社会経済環境といった心理社会的要因の影響を受けるため、医学モデルの疾病生成観点からの疾病予防に加えて、社会モデルの健康生成観点から人々の行動や社会環境にアプローチするヘルスプロモーションが必要です。
そこで本グループでは、健康社会学・健康体力学・公衆衛生学・精神保健学・社会福祉学・歯科保健学など、健康と福祉を包括する多領域の協同により、心身の健康問題とそのケアに関わる心理社会的要因について実証解明し、地域・学校・職域でのヘルスプロモーション施策を検討します。
研究課題
以下の健康課題とそのケアに関わる心理社会的要因の解明およびヘルスプロモーション施策の検討を行っています。
- 子ども研究(偏食、齲蝕、喫煙、うつ、体力、ストレス対処力)
- 障害者研究(障害のある学生の体力、ストレス対処力)
- 労働者研究(障害者施設ケアワーカー・一般企業従業員のうつ、仕事満足感、職業性ストレス、ストレス対処力)
- 妊娠育児期の女性研究(喫煙、うつ、ストレス対処力)
- 高齢者研究(介護、認知症、うつ、体力、身体機能、ストレス対処力)
これらの研究成果を公表すると共に、地域・学校・職域の各現場にフィードバックしてヘルスプロモーションを促進します。
期待される成果
- WHO(世界保健機関)が、社会モデルのヘルスプロモーション概念を提唱し、また健康の決定要因が社会環境にあることを提言して以来、ヘルスプロモーションの国際潮流は、社会モデルによる社会環境要因へのアプローチが中心となっています。我が国でも近年、経済格差がもたらす健康格差が指摘され、健康と社会環境の関連性が注目されていますが、その実証研究はまだ途上にあります。本取り組みによって、さまざまな心身健康問題に関わる社会環境要因の解明が期待されます。
- 近年、子どもから高齢者までうつや認知症等の精神疾患が増大し、我が国の五大疾患の一つとなりました。本取り組みではメンタルヘルスを重点的に取り上げ、疾病生成論による疾病予防に加えて健康生成論によるストレス対処力向上の要因を解明します。これにより効果的な社会支援策を検討し、健やかな青少年の育成と活力ある社会の創造に貢献します。
- 我が国では高齢者・障害者の増加にともない、QOL維持のための適切なケアを提供するケアワーカー不足が深刻化しています。一方でケアワーカーのストレスや健康問題が指摘されており、人材確保の上ではまず健康な労働生活の保障が不可欠です。本取り組みでは、これまで殆ど検討されていない障害者領域のケアワーカーのメンタルヘルスと職業性ストレスについて実証解明し、ケアする人・される人、両者のヘルスプロモーションに貢献したいと考えています。